LINEモバイルのSoftbank回線サービスが登場してから約80日が経過しました。
この間、「MVNO最速チャレンジ」などのキャンペーンの効果もあって、多くの新規ユーザーが加入したと思われますが、LINEモバイルのサービスインから約2か月後の9月4日、強力なライバルが現れました。
シェアTOP3に入る人気MVNO「mineo」から、同じSoftbank回線サービスが開始になりました。
今回は、格安通信サービスを選ぶ際の2大要素である「料金」と「通信速度」について、LINEmobileとmineoのSoftbank回線サービスを比較してみようと思います。
目次
MVNOがマルチ・キャリアを目指す理由とは
LINEモバイルとmineoは、共に複数の回線を取扱う「マルチ・キャリア」です。
LINEモバイルは、NTTドコモ回線(2016年)とSoftbank回線(2018年)でMVNOサービスを提供しています。
mineoは、au回線(Aプラン2014年)、ドコモ回線(Dプラン2015年)、Softbank回線(Sプラン2018年)でMVNOサービスを提供し、大手キャリアとの直接接続では初(※)のトリプル・キャリアとなりました。
※トリプル・キャリア:MVNEから回線の供給を受ける形では、先に「QTmobile」がトリプル・キャリアとなっています。ちなみにQTmobileのau回線は、mineoがMVNEとなっています。
LINEモバイル、mineoだけでなく、IIJ・NUROmobile等の多くのMVNOが複数回線サービスの提供を開始していますが、なぜMVNO各社はマルチ・キャリアを目指すのでしょうか?
それは、回線の選択肢が多い方がユーザーから選ばれやすくなるという事が大きな理由ですが、ただ間口が広いと言うだけでなく、その根底には「SIMロック解除」の問題があるのです。
日本国内でこれまでに販売されたスマートフォンの多くは過去に大手キャリアが販売してきた端末で、そのほとんどが大手キャリアのSIMロックがかけられています。
SIMロック端末を他社回線で使用するためには「SIMロック解除」が必要ですが、実はこれが格安通信会社を自由に選ぶ際の大きな障壁になっています。
SIMロック解除には面倒なルールが数々あります。
1. 2015年4月までに発売された端末はSIMロック解除対象外
2. 2015年5月以降に発売された端末は購入者本人であればSIMロック解除が可能
3. 同じ回線を使用するMVNOであればSIMロック解除不要で利用できる
4. 同じ回線を使用するMVNOであってもSIMロック解除が必要な例外がある
5. 2017年8月以降に発売された端末は同回線MVNOであれば例外なくSIMロック解除不要で利用できる
6. SIMロック解除できるのは購入者本人に限る
7. WEB上から手続きを行えば無料だが、ショップに持ち込んだ場合には解除費用が発生する
こうした大手キャリアの都合を優先したツギハギだらけの複雑なルールを嫌って、多くのユーザーがSIMロック解除手続きを避ける傾向にあり、それがMVNOへの乗換えを阻害している大きな要因となっています。
そこで格安通信会社各社は、「同じ回線を使用するMVNOであればSIMロック解除不要で利用できる」というルールを活かす事で、MVNOへの乗換えを簡単にしようと考えた訳です。
つまり、取り扱う回線が1社よりも、2社3社の回線サービスを提供すれば、より多くのユーザーはSIMロック解除なしに手持ち端末を利用できるので、自ずと乗換えユーザーが増加すると考えたわけです。
従来はユーザー側がMVNOに合わせてSIMロック解除していましたが、MVNO各社がマルチ・キャリア化する事で、MVNO側がユーザーを幅広く受け入れられる体制になったいう事です。
特に、SoftbankにはSIMロック解除できないiPhoneを保有するユーザーが多く、その多くが大手キャリアの料金を割高だと感じており、潜在的な乗換え希望ユーザーとして見込まれています。
そのため、旧型iPhone持込みで格安通信への乗換えを狙って、各社続々とSoftbank回線サービスの提供に踏み切っているという訳です。
==(ここがポイント)====
MVNO各社がマルチ・キャリア化する事で、SIMロック解除不能の端末でも格安通信への乗換え窓口が広がりつつあります。手持ちの端末をそのまま利用できる格安通信が見つけやすくなっています。
==(ここまで)====
LINEモバイルとmineoの料金比較
https://mobile.line.me/plan/
本項では、両社のSoftbank回線サービスの料金を比較してみます。
\ | LINEモバイル | mineo Sプラン | mineo Aプラン | |||
容量 | データSIM | 通話SIM | データSIM | 通話SIM | データSIM | 通話SIM |
500MB | – | – | 790円 970円(sms) |
1,750円 | 700円 | 1,310円 |
1GB | 500円 620円(sms) |
1,200円 | – | – | – | – |
3GB | 1,110円 | 1,690円 | 990円 1,170円(sms) |
1,950円 | 900円 | 1,510円 |
5GB | 1,640円 | 2,220円 | – | – | – | – |
6GB | – | – | 1,670円 1,850円(sms) |
2,630円 | 1,580円 | 2,190円 |
7GB | 2,300円 | 2,880円 | – | – | – | – |
10GB | 2,640円 | 3,220円 | 2,610円 2,790円(sms) |
3,570円 | 2,520円 | 3,130円 |
20GB | – | – | 4,070円 4,250円(sms) |
5,030円 | 3,980円 | 4,590円 |
30GB | – | – | 5,990円 6,170円(sms) |
6,950円 | 5,990円 | 6,510円 |
※料金は全ての税別金額です
※データSIMは、(sms)の表記のない欄は全てSMS付です
この表は、両社のSoftbank回線サービスと、比較のためのmineo Aプランの料金です、
LINEモバイルは、ドコモ回線と共通の料金体系で、どちらの回線を選んでも支払う料金は変わりません。
mineoは、au回線・ドコモ回線・Softbank回線全てで料金が異なっており、同じ容量でも利用する回線によって支払う金額が異なります。
こちらの表からは以下の事がわかります。
1. LINEモバイルには10GB超の大容量プランがない。
2. LINEモバイルの通話機能料金は、1GBでは700円、3GB以上では580円である。
3. mineoには、1GBプランがない。
4. mineo Aプランの通話機能は610円だが、Sプランでは960円である。
5. LINEモバイルSoftbank回線と、mineo SプランのデータSIMの料金はほぼ同水準である。
6. mineo Sプランの通話SIM料金はかなり割高である。
==(ここがポイント)====
mineo Sプランと比較した場合、LINEモバイルのデータSIM料金はほぼ同等ですが、通話機能付きでは、月額250〜350円程度、年間で3,000〜4,000円程度の差額が生じます。
==(ここまで)====
少〜中容量派向けのLINEモバイル
LINEモバイルには、10GB超のプランがありません。
一方、少〜中容量では、1GBプランから、3GB・5GB・7GBと、10GB未満の容量を4タイプも用意しており、少〜中容量を求めるユーザーにきめ細かい料金設定となっています。
mineoは、10GB未満の容量は、500MB・3GB・6GBを用意していますが、500MBは通話中心のユーザー向けであり、データ通信をある程度利用するユーザー向け容量は2タイプしかない事になります。
逆に、10GB以上の容量では、20GB・30GBを用意しており、大容量派向けとなっています。
==(ここがポイント)====
LINEモバイルは、大容量派には選択肢がなく、月間容量10GBまでの少〜中容量派向けと言えます。
逆に、mineoは少〜中容量の選択肢が少なく、10GB超のプランが多く、大容量派向けと言えます。
==(ここまで)====
諸費用・オプション料金比較
https://mobile.line.me/plan/
ここでは、契約時や変更時の手数料や、オプションサービスの料金等プラン料金以外の費用について比較します。
LINEモバイル S | mineo Sプラン | |
■初期費用 | ||
契約事務手数料 | 3,000円 | 3,000円 |
SIM発行手数料 | 400円 | 337円 |
初月料金 | 無料 | 日割り |
■解約・MNP | ||
最低利用期間 | 通話SIM:1年間 | 通話SIM:1年間 |
最低利用期間内:解約 | 9,800円 | 無料 |
最低利用期間内:MNP転出 | 9,800円 | 11,500円 |
MNP予約番号発行 | 3,000円 | 2,000円 |
■変更 | ||
回線変更 | 3,000円 | 2,000円 |
SIM再発行 | 3,000円 | 2,000円 |
■オプション | ||
パケット譲渡 | パケットプレゼント:無料 | パケットギフト:無料 |
かけ放題 | 10分:880円/月 | 10分:850円/月 |
通話パック | 提供なし | 30分:840円/月 60分:1,680円/月 |
端末保証 | 450円/月 | 370円/月 |
持ち込み端末保証 | 500円/月 | 500円/月 |
金額は全て税別表示
こちらの表からはこんな事が分かります。
1. 諸費用は、若干LINEモバイルの方が割高な設定
2. 契約初月料金は、LINEモバイルでは無料となる
3. mineoでは最低利用期間内であっても「解約(電番を他社で使わない)」の場合は解約金不要
4. LINEモバイル・mineoとも、手持ちのデータ容量を譲渡する仕組みがある
乗換えを考えた際に特徴的なのは、契約初月のプラン料金です。
LINEモバイルは契約初月のプラン料金を無料としているため、他社からの乗換え時に切り替え月の料金がダブルことがありません。
初月日割りの場合には、Softbankの最終請求と、乗換え先の初月日割り料金がダブルで請求されますので、LINEモバイルの「初月無料」は乗換え時の大きな負担軽減になります。
無料で通信可能なサービスを比較
https://mobile.line.me/plan/communication-free/
LINEモバイルの特徴的なサービスと言えば「データフリー」です。
データフリーは、特定のSNSに要する通信を、月間の高速データ容量を消費せずに利用できる仕組みで、簡単に言えば、所定のSNSを通信量無料で利用できるという事です。
最少プラン「LINEフリープラン」ではLINEが、3GB以上の「コミュニケーションプラン」では、LINEに加え、Facebook・Twitter・Instagramの通信が無料となり、「Music+プラン」では、さらにLINE Musicの通信が無料となります。
データフリーは、ユーザーのデータ容量にはカウントされませんが、もし、月間のデータ容量を使い切ってしまった場合でも、データフリー対象のコンテンツに関しては、常に速度制限を受けずに利用できる点も特徴です。
所定のSNSに要する通信でデータ容量を消費しないと言う事は、他のコンテンツに使用できる容量が実質的に増えた事になります。
一方、mineoの無料通信は、「節約モード」になります。
こちらは、利用するコンテンツに制限はありませんが、通信速度を低速(200kbps)に制限されるのが特徴です。
メールの送受信やSNSのトーク程度であれば、ピーク時簡帯以外であれば、200kbpsでも充分に実用性があり、使い方によっては、貴重な高速通信容量を効率よく利用する事ができます。
また、mineoには「マイネ王」で提供している「フリータンク」という独自サービスがあります。これはデータ容量の互助制度のようなもので、容量を余らせたユーザーの寄付を、足りなかったユーザーが無料で貰う事ができる仕組みで、月間1000MB分の無料通信が貰えるのと同じです。
この「フリータンク」があるからmineoを選ぶというユーザーも少なくありません。
==(ここがポイント)====
「データフリー」と「節約モード」はいずれも無料で提供されますが、常に高速通信でSNSを利用できるLINEモバイルのデータフリーは実用性が高いと考えられます。mineoの節約モードは容量温存には大きなメリットですが、通信を快適に行うという面では若干実用性に欠けそうです。
==(ここまで)====
LINEモバイルとmineoの通信速度比較
格安通信会社を選ぶ際に、「料金」と共に大きなウエイトを占めるのは「通信速度」です。
通信速度が遅いと、WEB閲覧時にページの表示に時間がかかったり、動画視聴の場合には再生が停止する等の弊害を生みます。またInstagram等、画像中心のSNSではある程度の通信速度が求められます。
MVNOの通信速度に関する基礎知識
MVNOは、大手キャリアの回線を借り受けて通信サービスを提供していますが、借りている回線の量によって、通信速度の速い・遅いが決まります。
例えるなら高速道路の渋滞です。
同じ道でもクルマの量が少なければ渋滞しませんが、多くの車が集中すれば渋滞が起こります。
また、通行する車の量が同じであれば、道路が広ければ渋滞しにくくなり、狭い道路では渋滞しやすくなります。
通信も同じで、MVNOが借りている回線の許容量より多くのユーザーが利用すれば、通信に渋滞が起こって通信速度が低下しますし、反対に利用が集中しない時間帯は快適に通信できる訳です。
速度低下の対策としては、混雑時でも快適に通信できるだけの回線量を準備しておけばよいのですが、MVNOも営利企業である以上は無限に回線を増強し続ける事はできません。
ある程度の利益が見込める程度の回線量に留めると、時として、回線量が足りなくなり通信速度の低下が起こってしまう場合がある訳です。
つまり、MVNOの通信速度の低下はこういう事です。
1. MVNOが借りている回線のキャパシティより、利用量が上回った場合に速度低下が起こる。
2. 速度低下の一番の解決策は回線の増強だが、採算を無視して速度低下を100%解消するのは難しい。
3. ゆえに、MVNOの通信速度は、大手キャリアより遅い場合が多い。
優秀な速度を維持している両社のSoftbank回線
こちらは、LINEモバイルSoftbank回線と、mineo Sプランの通信速度の計測履歴です。
計測時期は、9月上旬〜中旬で、時間帯は、通信が混雑しそうな時間帯を狙って計測しています。
LINEモバイルの方が若干速度が遅いように見えますが、LINEモバイルSoftbank回線はサービスインしてから2か月が経過しておりユーザー数はそこそこ増えていると見られ、一方、mineo Sプランは9月4日にサービスインした直後である事を勘案すると、ほぼ同等の通信速度と言えます。
また、10Mbpsを超えるような速度域では、15Mbpsと30Mbpsの速度差を感じる事はほとんどできないので、細かな数値の違いはあまり気にせずに、12時台や18時台の通信が混雑する時間帯にも、10Mbps超の速度が出ている事に注目してください。
現時点では、LINEモバイルとmineoのSoftbank回線サービスの通信速度はほぼ互角と言えます。
サービスインから1〜2か月では、まだどちらも、速度低下を起こすほどのユーザー増加ではないと見られます。
しかし、両社ともSoftbank回線以外の回線では同じ事は言えません。
LINEモバイルのドコモ回線、mineoのau回線・ドコモ回線は、いずれも混雑時間帯の速度低下が著しく、実用速度の下限と言われる「1Mbps」を割込む事が少なくありません。
サービス開始から徐々にユーザーが増加するにつれて通信速度が低下してしまう事は、もはや格安通信サービスの宿命とも言える現象で、両社ともSoftbank回線以外の回線サービスの速度低下がそれを如実に物語っています。
LINEモバイルとmineo選ぶならどっち?
ここまで、「料金」関連と、「通信速度」について、LINEモバイルとmineo各々のSoftbanmk回線を比較してきましたが、最終的にいずれを選ぶのか、結論を出したいと思います。
1. データSIMの料金はほぼ互角。
2. 通話SIMでは、料金が割高なmineoを選ぶ理由が希薄。
3. 諸費用・オプション料金は、LINEモバイルが若干割高な設定。
4. LINEモバイルは、契約初月料金が無料で、新旧請求が重複しないメリットは大きい。
5. 無制限とは言え速度を200kbpsに抑えているmineo「節約モード」より、SNSを常時高速に無料で使えるLINEモバイル「データフリー」の方が使い勝手は上か。
6. 無料で1000MB/月までデータ容量を貰える「フリータンク」はmineoだけのメリット。
7. LINEモバイルもmineoも、データ容量をプレゼントできる制度がある。
8. 通信速度は現時点では互角。
9. LINEモバイルは、国内正規版iPhoneを購入できる。
10. LINEモバイルがソフトバンクグループ入りしたメリットは大きい。独立系mineoは資金繰りなどから将来、低下した通信速度を回復できないなどのリスクが予想される。
かなり難しい選択になると思われますが、mineoは、やはり活発なユーザーコミュニティと「フリータンク」の存在は大きいと思います。ベテランユーザーからのアドバイスなどを求めたいのであればmineoがお勧めになるでしょう。
LINEをはじめ、SNSをよく利用する方であれば、各SNS通信料が無料化できる「データフリー」はLINEモバイルの大きなメリットですし、今やライフラインとさえ言われるLINEとの親和性は関連会社だけあります。
また、ソフトバンクグループに加わった事で生じる有形無形のメリットは大きく、資金面や端末調達など様々な面で有効と思われます。
いずれを選んでも、ここから半年程度はあまり差がないと思いますが、私であれば、大手キャリアグループとなった安定性を保険にしたいと考えます。